16- D- 0219 201 6 年 6 月 2 1 日
石油元売各社の 15 年度決算の
注目点
石油元売大手 5 社(J X ホールディングス(3 月決算)、出光興産(3 月決算)、コスモエネルギーホールデ ィングス(3 月決算)、東燃ゼネラル石油(12 月決算)、昭和シェル石油(12 月決算))の 15 年度決算実績お よび16 年度業績予想を踏まえ、株式会社日本格付研究所(J C R)の現況に関する認識と格付上の注目点を整 理した。
1.
業界動向
事業環境は厳しさを増している。ドバイ原油価格は14年後半の急落後、15年の年央にかけて米国のシェ ールオイル減産などによる需給改善期待を背景に 60ドル/ バレル台へと回復した。しかし、その後は米国原 油生産量が高水準を維持、OPE C を中心とする産油国の増産や中国の景気減速による需要減退観測など需給 面の弱さに市場の注目が集まり、下値を模索する展開となった。この結果、ドバイ原油価格(月平均)は15 年12 月に35 ドル/ バレルへと下落、リーマンショック後の安値であった 08 年12 月の 41 ドル/ バレルを下 回り、16 年 1 月下旬には 25 ドル/ バレルを切る水準にまで下落した。原油価格の大幅下落に伴い、石油事業 において多額の在庫評価損が発生、石油開発事業では収益低下に加えて、減損損失を追加計上するケースも 見られた。石油事業の在庫評価損発生はおおむね一時的要因と考えられるが、石油開発事業の収益回復には しばらく時間を要する見込みである。
石油事業では国内需要が引き続き減少傾向にある。15年度の国内需要は燃料油全体で前期比 1. 1%減、ガ ソリンで同0.3%増となった。ガソリンでは14 年度に消費税増税後の需要反動減などの影響があったが、こ うした一時的要因を除けば、自動車の燃費改善などを背景とする構造的な需要減少傾向に大きな変化は見ら れない。一方、供給面ではエネルギー供給構造高度化法の二次告示の対応期限である 17 年 3月末に向けて、 現状比で 1割程度の精製能力削減が進む見通しであり、当面の需給改善に寄与することが期待できる。また、 石油化学事業では原油価格下落や円安もあり、オレフィンおよび芳香族を中心として収益が堅調に推移して いる。
石油製品の内需減少下で過当競争が続く中、原油価格の大幅下落により、石油開発など上流分野を手掛け る石油元売を中心として成長戦略の見直しを迫られている。こうした中、15 年 7 月に出光興産と昭和シェル 石油が経営統合に向けて本格的な協議を進めることで合意、同年 11 月には経営統合に関する基本合意書を 締結した。さらに、15 年 12 月に J Xホールディングスと東燃ゼネラル石油が経営統合に関する基本合意書を 締結したことで、二大グループの形成に向けて業界再編が大きく進展し始めている。
2.
決算動向
15 年度(16/ 3 期および 15/ 12 期)の5 社合計の経常利益は 802 億円の赤字となった。ただし、原油価格 下落に伴い 5 社合計で6, 023 億円の在庫評価損が発生しており、この影響を除く実質経常利益では 5, 221 億 円と前期比 32%の増益であった(図表 1)。
銅価下落やカセロネス銅鉱山のフル稼働の遅れなどにより大幅減益となった。また、昭和シェル石油のエネ ル ギ ー ソ リ ュ ー シ ョ ン 事 業 は 、 太 陽 電 池 パ ネ ル の 国 内 需 要 減 少 や 販 売 価 格 低 下 な ど に よ り 赤 字 に 転 じ た 。 (図表 2)。
15 年度末(16 年 3 月末および 15 年 12 月末)の 5 社合計の有利子負債残高は 4 兆 7, 407 億円、14 年度末 比で3. 6%減少した。5 社合計の設備投資額は 14 年度並みの水準となったが、原油価格下落に伴う運転資金 減少が有利子負債削減に寄与した。一方、在庫評価損発生や資源関連の減損損失計上などにより(親会社株 主に帰属する)5 社合計の当期純利益は 3, 921 億円の損失となったこともあり、5 社とも自己資本が毀損した。 ただし、自己資本毀損の程度は各社ごとに異なり、財務構成の格差が拡大する結果となった。15 年度末のネ ット・デット・エクイティ・レシオを 14 年度末と比較すると、東燃ゼネラル石油が改善、昭和シェル石油 と出光興産はほぼ横ばい、J X ホールディングスが若干の悪化、コスモエネルギーホールディングスが大幅な 悪化となった。(図表 3)。
3.
決算に
お
け
る
格付上の
注目点
16 年度(17/ 3 期および 16/ 12 期)は、5 社合計の経常利益で 5, 225 億円と大幅な黒字転換を予想する。原 油価格に底打ちの兆しが見られる中、5 社合計で若干の在庫評価益に転じることが大きく寄与する。一方、 実質経常利益では 5, 420 億円、前期比 9%の減益予想となっている(図表 1)。
セグメント損益を在庫評価の影響を除くベースでみると、石油開発事業では J X ホールディングス、出光 興産、コスモエネルギーホールディングスの 3社とも原油生産量の増加を見込むが、原油価格下落の影響が 大きく、赤字または大幅減益を予想する。また、石油化学事業でも円高への反転により、丸善石油化学の通 期連結効果を見込むコスモエネルギーホールディングスを除けば減益予想となっている。一方、石油事業で は 15 年度に発生した原油価格下落局面におけるタイムラグの影響が解消に向かうことなどを見込み、増益 予想が主流になっている(図表 2)。このほか、J X ホールディングスの金属事業は銅価回復などにより増益、 昭和シェル石油のエネルギーソリューション事業では発電能力拡大や太陽電池パネルの生産コスト低減など による赤字縮小を予想する。
石油開発事業をはじめとする資源上流分野の収益低下が避けられない中、石油事業を中心として着実に収 益回復を図れるかが当面の大きな注目点である。前述したように、17 年 3 月末に向けて精製能力削減が進む ことによる国内需給改善のほか、石油元売の二大グループ形成を通じた過当競争の緩和も期待できる。この ため、石油事業の収益は回復に向かう可能性が高いと見ているが、当面の回復が遅れる場合には格付判断上 のネガティブ要因となり得る。
また、石油事業を中心とする収益回復を通じて、毀損した自己資本の修復を含めて財務構成改善を図れる かにも注目している。原油価格の底打ちにより、在庫評価損を主因として自己資本を毀損するリスクが小さ くなる一方、運転資金要因により今後は有利子負債が増加に転じる可能性もある。特に、財務構成が悪化し ている石油元売ほど早急な改善を要するため、当面の進捗を見定める必要がある。なお、エネルギー供給構 造高度化法の二次告示への対応に伴い、製油所閉鎖などにより財務面に影響が及ぶ懸念もあることから、今 後の各社の対応にも注意を払っていく。
(図表 1)石油元売大手 5 社合計の経常利益および実質経常利益
8,821
5,211 5,521
-3,975
-802
5,225 4,854
4,165
2,924
3,950
5,221
4,765
-5,000 -3,000 -1,000 1,000 3,000 5,000 7,000 9,000
11 12 13 14 15 16(予)
(億円)
(年度)
経常利益 実質経常利益
(注)実質経常利益は在庫評価の影響を除く経常利益。16 年度予想は会社予想。 (出所)各社決算説明資料
(図表 2)石油元売大手 5 社のセグメント損益(在庫影響を除くベース)
-1,000 -500 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500
11 12 13 14 15 16E 11 12 13 14 15 16E 11 12 13 14 15 16E 11 12 13 14 15 16E 11 12 13 14 15
JXホールディングス 出光興産 コスモエネルギー
ホールディングス
東燃ゼネラル石油 昭和シェル石油
(億円)
(年度)
その他
金属
石油開発
石油化学
石油
(注) セグメント利益は J X ホールディングスとコスモエネルギーホールディングスが経常利益ベース、他は営業
利益ベース。
(注) 東燃ゼネラル石油と昭和シェル石油は 12 月決算、他は 3 月決算。東燃ゼネラル石油はのれん償却を含む。
(図表 3)石油元売大手 5 社の業績推移 (単位:億円、倍、%) 12/ 3 期
実績
13/ 3 期 実績
14/ 3 期 実績
15/ 3 期 実績
16/ 3 期 実績
17/ 3 期 予想
J Xホールディングス 売上高 107, 239 112, 195 124, 120 108, 825 87, 378 88, 000
(5020) 営業利益 3, 278 2, 515 2, 137 - 2, 189 - 622 2, 300
経常利益 4, 078 3, 283 3, 023 - 1, 501 - 86 2, 600
実質経常利益 2, 913 2, 710 1, 830 2, 552 2, 609 2, 200
在庫影響額 1, 165 573 1, 193 - 4, 053 - 2, 695 400
当期利益 1, 706 1, 595 1, 070 - 2, 772 - 2, 785 1, 250 自己資本 17, 442 19, 428 21, 351 19, 368 14, 989 - 有利子負債 23, 010 25, 799 28, 327 26, 203 25, 814 -
DER 1. 32 1. 33 1. 33 1. 35 1. 72 -
ネット DER 1. 18 1. 20 1. 19 1. 18 1. 39 -
自己資本比率 26. 1 26. 7 27. 4 26. 1 22. 3 -
出光興産 売上高 43, 103 43, 747 50, 350 46, 297 35, 702 32, 600
(5019) 営業利益 1, 381 1, 107 782 - 1, 048 - 196 1, 130
経常利益 1, 336 1, 091 819 - 1, 076 - 219 1, 120
実質経常利益 995 830 390 257 1, 003 920
在庫影響額 341 261 429 - 1, 333 - 1, 222 200
当期利益 644 502 363 - 1, 380 - 360 700
自己資本 5, 866 6, 536 7, 024 5, 872 5, 006 -
有利子負債 9, 198 8, 964 10, 819 10, 062 9, 096 -
DER 1. 57 1. 37 1. 54 1. 71 1. 82 -
ネット DER 1. 28 1. 19 1. 31 1. 52 1. 57 -
自己資本比率 21. 9 24. 0 23. 5 21. 5 20. 8 -
コスモエネルギー 売上高 31, 097 31, 667 35, 378 30, 358 22, 443 25, 200
ホールディングス 営業利益 636 524 397 - 384 - 297 775
(5021) 経常利益 614 484 418 - 496 - 361 675
実質経常利益 362 331 257 665 326 545
在庫影響額 252 153 161 - 1, 161 - 687 130
当期利益 - 91 - 859 43 - 777 - 502 475
自己資本 3, 169 2, 305 2, 319 1, 672 1, 380 -
有利子負債 7, 218 8, 435 8, 644 6, 929 7, 272 -
DER 2. 28 3. 66 3. 73 4. 14 5. 27 -
ネット DER 1. 89 3. 10 3. 12 3. 57 4. 83 -
自己資本比率 18. 9 13. 2 13. 7 11. 7 9. 8 -
(注)上記 3 社の 16/ 3 期は速報ベース。コスモエネルギーホールディングスは資本性評価後の数値。
11/ 12 期 実績
12/ 12 期 実績
13/ 12 期 実績
14/ 12 期 実績
15/ 12 期 実績
16/ 12 期 予想
東燃ゼネラル石油 売上高 26, 771 28, 049 32, 412 34, 511 26, 279 23, 000
(5012) 営業利益 2, 162 273 523 - 729 20 480
経常利益 2, 176 225 498 - 734 - 3 470
実質経常利益 285 181 28 131 868 560
在庫影響額 1, 891 44 470 - 865 - 871 - 90
当期利益 1, 328 548 229 - 140 1 310
自己資本 3, 595 2, 876 2, 936 2, 617 2, 330 -
有利子負債 636 3, 336 3, 296 3, 858 3, 343 -
DER 0. 18 1. 16 1. 12 1. 47 1. 44 -
ネット DER 0. 18 1. 11 1. 06 1. 34 1. 01 -
自己資本比率 32. 3 20. 8 20. 8 19. 0 19. 3 -
昭和シェル石油 売上高 27, 714 26, 293 29, 538 29, 980 21, 776 16, 800
(5002) 営業利益 603 147 754 - 181 - 122 360
経常利益 618 127 762 - 167 - 133 360
実質経常利益 300 112 418 345 415 540
在庫影響額 318 15 344 - 512 - 548 - 180
当期利益 231 10 603 - 97 - 275 160
自己資本 2, 559 2, 498 3, 006 2, 721 2, 226 -
有利子負債 2, 822 2, 696 2, 246 2, 127 1, 582 -
【参考】
発行体:J X ホールディングス株式会社
長期発行体格付:A + 見通し:安定的
発行体:出光興産株式会社
長期発行体格付:A - 見通し:安定的
発行体:コスモエネルギーホールディングス株式会社
長期発行体格付:BBB 見通し:安定的
発行体:東燃ゼネラル石油株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
発行体:昭和シェル石油株式会社
長期発行体格付:A 見通し:安定的
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